リクルート10年間の振り返りと学びについて
リクルート10年間の振り返りと学びについて
目次
- はじめに
- 自己紹介
- やってきたこと
- 学びと意識していたこと
- 何故辞めるのか
- おわりに
はじめに
本記事は Recruit Advent Calendar 2021 23日目の記事となります。 (大幅に遅刻してすみません…)
そして退職エントリをAdvent Calendarとして記載させていただくことになり申し訳ありません。
この記事は私が2021年12月末にて10年勤めたリクルートを退職させていただくことに伴い、これまで行ってきたことを振り返るために記載させて頂いています。 内容についてはリクルートの中で学んだことや意識したことを中心に記載しており、広く多くの人というよりはリクルートの人に向けた内容となっています。
また、会社としての発言では無く、個人としての考えですのでご留意ください。
自己紹介
宮川と申します。 リクルートでは横断技術組織やインフラ組織、内製エンジニア組織の責任者など幅広く担当させていただきました。 趣味としてポケモン対戦と折り紙をやり込んでいます。
やってきたこと
入社直後
2012年11月に当時分社化直後のリクルートテクノロジーズにSIerから転職してきました。 APソリューショングループ(以下ASG)というリクルート横断で開発支援を行うグループに配属となり、技術支援や共通化を行うチームのリーダーをさせてもらいました。 当時のリクルートはまだエンジニア採用はほぼ行っておらず、自分たちでコードを書いているようなエンジニアは数えるほどしかいない状態でしたが、チームはめちゃくちゃ優秀なメンバーで構成されていてビックリしたのを覚えています。
ASGでは当時の全社フレームワークの改修や、Elasticsearchを活用した検索基盤、プッシュ通知基盤の構築など、様々な案件をエンジニア兼リーダーとして推進させてもらいました。 特に検索基盤については、こういうことをやってみたいと同僚たちと話してアイディアを整理した内容を上司に相談させてもらい、チャレンジする機会を作らさせてもらいました。 今考えると内容は粗いものでしたが、少しずつ方針転換しながら進めていく中で現在でも継続して活躍している検索改善チームを作るきっかけになっていったことは良かったと思っています。
リクルートに入社したばかりで右も左も良くわかっていない中、様々なチャレンジをさせてもらい、本当に楽しかったです。
マネージャーへの転向
入社して1年半ほどたち、仕事でもある程度成果を出せるようになった頃、当時の上司からGMをやってみないかという打診をもらいました。 リクルートに転職した理由の一つに、マネジメントではなくエンジニアとしての成長をしていきたいという思いがあったため、打診をもらった際は非常に悩みました。 ただ、せっかくの機会だから一回やってみようと思いやってみたのが自分の中で一つの転機だったと感じています。
GMとして仕事していく中で、エンジニアが活躍できる環境を作ることや、一緒になって課題を解決していくことが自分にとってはすごく楽しく、やってみないと分からないことがあるというのを実感しました。 当初はマネジメントとして行うこと自体が初めてなため、マイクロマネジメント気味になってしまっていましたが、一緒に仕事するメンバーに恵まれたこともあり、任せることやコーチングを学ばせてもらいました。
また、当時はまだリクルート全体としてシステム障害も多く、その中で多くの障害対応も行っていました。 障害対応はリーダーシップやエンジニアとしての経験など様々なスキルが求められるため、今振り返ると非常に良い経験だったと考えています。
組織の運営
インフラ組織や内製開発組織の部長、リクルートテクノロジーズの執行役員、そしてリクルート統合の検討、統合後のエンジニアリング室室長など幅広い組織の設計や運営に挑戦させてもらいました。 その中で、組織の規模が30人、50人、100人、200人と年々大きくなり、様々な壁にぶつかりました。
ぶつかった壁・テーマはありきたりですが、主には以下のようなところです。
- 自分ではすべてを見ることが出来ない中でどうやって適切な判断を行えるようにするか
- やっていることがプロダクトや機能によって全く違う中で、どのように一体感を作っていくか
- 内製化やエンジニアの価値をどのように他組織に理解してもらうか、何にコミットするのか
- 組織として拡大していく中で育成や採用をどのように進化させていくか
これらのテーマはどれも完璧な答えはなく、常にビジネス状況や組織の状況に応じてグレーな判断が必要なものでした。 その中で、なんとかやってきたというのが正直な感想です。 個々の判断・対応についてはこの場で改めて話すものでもないので割愛しますが、それらを通した学びについては後述します。
常に悩みながら、苦労しながらの組織運営だったので、メンバーやGMにも迷惑かけたことも多かったと思います。 しかし、周囲の協力とともに組織、自身ともに成長できたと感じています。
リクルートでの10年のうち半分くらいの期間、組織運営を行っていましたが、間違えなくリクルートでなくては経験できなかったことだたと考えています。
学んだこと
エンジニアからマネージャー、部長、室長となっていき、見ている幅が広がった中で、自分は組織をシステムとして見立ててアーキテクトとしての経験をベースに組織運営を行っていました。 他の人の話を聞いていても、本人の得意なスキル(プロジェクトマネジメントやマーケティングなど)を抽象化して組織運営を考えている人が多い印象でした。 ただ、アーキテクトとしての経験だけではうまく行かないことも多く、その中で学んだことや意識したことを記載します。
システム思考で考える
組織の中では様々なトラブルや課題がありますが、それを個々の事象として捉えるのではなく、様々な現象をシステムとして捉えるのがシステム思考です。 重要なのは課題が起きたときに表面的な対応をするのではなく、事象の繋がりを意識して構造化し、原因と影響を深堀りしていく手法として活用していました。 エンジニアはロジカルシンキングが得意だと思うので、事象の分析は得意なのですが、様々な事象を繋げて、なぜそういうことが起こるのかを分析することにより解決した課題は多かったです。
形から入りすぎない
コンウェイの法則や逆コンウェイの法則など、組織とシステムアーキテクチャには共通点や影響が強いので、どうしても組織の形をしっかりと整えることを意識してしまいます。 ただ、組織は人に紐づくので、無理に組織を作ってしまっても人がいなければうまく回らないです。 また、組織の名前も目的に合わせて名前を最適に決めたくなるのですが、それにより組織の役割が制限されてしまうこともあります。 目指したい姿に合わせて組織を作るのか、名前も具体的な役割の名前にするのかは状況に合わせて最適に判断する必要があります。 個人的には、目指したい姿は意識しつつも、どうしてもということがない限り組織に合わせるのではなくメンバーの成長に合わせるべきで、組織名前も抽象的にしておいたほうが良いというのが最終的な方向性でした。
見える化と情報が入ってくる仕組みづくり
見る範囲が広がるにつれ、どうしても見えなくなることが多く、どれだけ多くの情報を見えるようにしておくか、本当に重要でした。 システムの情報やプロジェクトの情報、組織のコンディションなどです。 実際に最新の情報を集めるのは難しく、なんとか効率的に取れるよう自動化を目指したのですが、なかなかうまく行かなかったことが多かったです。 当たり前のことですが、最初から全部の自動化を目指すのではなく、人手で集める仕組みを組み合わせるのが重要だというのが自分の学びでした。
また、情報が入ってくる仕組みとして、同じ情報を様々な角度から入ってくるようにすることの重要性も学びました。 立場によって見え方の違いが大きく、一つの情報ソースだけでは判断を間違えることが多かったです。 そのためには様々な立場の人と話すことも重要ですし、困ったことがあったときに気軽に相談できる雰囲気を作ることも重要です。 一朝一夕で出来ることでは無いですが、日々日々多くの人と話していることが大事だと考えています。
組織文化の違いについての理解
組織が大きくなっていくと、最初から自分が関わっている組織ではない組織を見ることも増えてきます。 その中で意識したのは、その組織の大事にしていること、文化についての理解です。 同じ会社であっても、小さいチームであっても、人が集まっていればそれぞれの組織に大事にしていることや文化があります。 それをいきなり変えに行ったり、一方的なメッセージをしてしまうと、相手に不安感を与えます。 そのため、相互理解がしっかりと出来るまで、焦らないことが大事だと考えています。
何故辞めるのか
このように様々な学びもあり、この10年間、本当に最高の経験させてもらったと考えています。 ただ、ちょうど40歳になるタイミングで、次の10年でまた新しいチャレンジをしたいという気持ちもありました。 リクルートはいつか辞めるだろうと思っていましたが、10年目、40歳、そして一つの切れ目であったリクルート統合という仕事の切れ目とタイミングが重なり、ここで辞めなければ辞めるタイミングはないと考え、退職を決断させてもらいました。 本当に良い環境だったので最後まで迷いましたが、ここで辞めなければ少なくともあと5年は残っていたと思います。
様々な人に迷惑をかけましたが、卒業を受け入れてくれてありがとうございました。
おわりに
この先は全く違う業界でいわゆるDX的な組織の構築にチャレンジしてみようと考えています。 そちらの取り組みについては追って報告できればと考えています。
リクルートはチャレンジしたい人や、マネジメントについて勉強したい人については本当に良い環境だと思っています。 万人に向く会社では無いですが、合う人には本当に成長できる良い会社だと思います。
10年間、本当にお世話になりました。